森澤勇司(Morisawa Yuji)
東京生まれ 新宿区在住
重要無形文化財「能楽」保持者、能楽師小鼓方
20歳 テンプル大学(新宿校)在学中にポスターを見て能楽養成所へ
重要無形文化財能楽保持者(日本能楽会会員)
32歳 映画「失楽園」大河ドラマ「秀吉」に出演
独立
43歳 脳梗塞で倒れる
退院後、1日10冊の本を読む
マインドマップ・記憶術・心理学・マーケティングを学ぶ
日本メンタルヘルス協会 入会
『ビジネス版「風姿花伝」の教え』(マイナビ出版)出版
海外公演 ニューヨーク(ジャパンソサエティー)・モナコ・北京・ガルニエ
Zoomにてロサンゼルス サウスベイマネージメントセミナー講師
桐蔭大学 生涯学習 講師
能楽普及のためにSNSで発信中(メルマガ・オンラインサロン・クラブハウス)
二冊目の著書を執筆中
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しゃけ:
NY1pageの記事に引き続き、クロスロードでもインタビューに応えていただきありがとうございます。『ビジネス版「風姿花伝」の教え』読ませていただきました。世阿弥の言葉かわかりやすく訳されていて、学ぶこといっぱいでとても感動しました!
森澤さん:
ありがとうございます。出版社が和文化に詳しい人探しているということで、知り合いから声をかけていただきました。オファーは「風姿花伝」についてだったので、「風姿花伝」のエッセンスの含まれた題材を200項目集めました。その中からピックアップした100項目を一冊の本にまとめました。最初、一項目を15行で書き上げたのですが、出版社から「すべてを14行に書き直して欲しい」と言われて・・・1日でがーーっと書き直しました。
しゃけ:
え!そんな経緯があったのですね。1日で直してしまうとはすごいです!
650年前に書かれたものとは思えない、今すぐに役に立つお話ばかりでした。
森澤さん:
そうですね。世阿弥は未来が見えていたのかな、と思ってしまいます。予言的というか。世阿弥は「人には命あり、能に果てあるべからず」という言葉を残してこの世を去っていますが、能の世界観は今の日本の文化(特に漫画)に影響を与えていると思います。
能は見えない世界や夢の世界を題材にすることが多いのですが、現在の「ウルトラマン」「鬼滅の刃」「妖怪ウォッチ」など、テレビでよく見られている作品たちと能の形式が実はそっくりだったりします。能の面(おもて)にも、神、幽霊、鬼が使われていますからね。
漫画「ワールドイズダンシング」は世阿弥が主人公ですし。室町時代、平安時代と現代は少し似ていると思いませんか?
しゃけ:
明らかに昭和とは何かが違うとは思います。そして「見えない世界を見たい」という気持ちはいつの時代も変わらないのかなあ、と。
森澤さん:
面をつけることによって「別人格」になり舞い踊るというのは世界各国の古代でよくある文化ですよね。見えないものを見せることによって、人間が忘れてはいけないことを思い出させる効果があると思います。
地震や津波、雷などは神が存在していることを示しているとされます。それらは恐ろしいですが、雷が鳴らなければ米の出来が悪いとも言われます。「人間を越えた力(自然)への敬意を忘れるな」ということですね。そして、「忘れてはいけない大切なこと」は時代を超えるだろうと世阿弥は予測していたのだと思います。
しゃけ:
最近では小学校や中学校で能に触れる機会が増えたと聞いていますが、森澤さんもワークショップなどで学校に行かれるのですか?
森澤さん:
はい。1月に小学校と中学校へ行ってきました。和文化を若い世代に伝えるための事業は文化庁でも力を入れていますね。(2002年から全国130ヵ所で能楽公演を行っている)
文化庁経由の能楽公演の他に、地域で呼ばれたり、スクールコーディネーターの方や校長先生から直接連絡をいただいて小中学校でワークショップをさせていただいております。最近はSNSを通じてお話をいただくことも多いです。
中学生全生徒を対象に1日かけて5回の授業をしたり、音楽クラブの活動として10日間呼んでいただいたこともあります。
和文化を次世代につなぐためには、まずお母さま方に知ってもらいということで、赤ちゃんとママのリフレッシュコンサートで集まった皆様に、能のお話をさせていただいたこともあります。
能に触れることは0歳児からできますよ。
しゃけ:
武士の文化を0歳児が触れるって、かっこいいですね。
森澤さん:
能は武士の公式芸能なので、「古い」と思われがちですが、実は私たちが普段使っている言葉の中にも生きていたりします。
花のたんぽぽは別名「つづみぐさ」と呼ばれています。踏まれても咲き続けることから、武士の家紋として使われてきた花で能の装束に使われることも多いです。小鼓の音も「タ」と「ポ」で表現することがあります。
それから、美味しいものを飲んだり食べたりした時に「舌鼓を打つ」とか「乙(オツ)だねえ!」と言いますよね。能の世界では小鼓の「ポン」という音のことを「オツ」と言うんです。「乙だねぇ」の乙は小鼓を打ったときの音が由来だと思います。
しゃけ:
なるほど!能の世界は奥が深いですね。
森澤さん:
私もまだまだ修行中の身です。一度の生ではとても学びきれなくて、輪廻してあと3回くらい小鼓を打つ人生をやるんじゃないでしょうか(笑)
しゃけ:
!飽きないんですか?
森澤さん:
めんどくさいとか疲れたとかそういう感じはないですね。能の舞台は毎回同じことはできないんです。まず、通しでリハーサルすることもありません。ほとんどぶつけ本番のようなものなんですよ。
まず「シテ方」に5つの流派があり、「ワキ方」に3つの流派があり、「狂言方」に2つの流派があります。そして囃子方には4つの楽器があり、楽器一つ一つにそれぞれの流派がある(小鼓は4流)ので、一つの曲に3600通りのスコア譜があるということになります。
ぐちゃぐちゃになってしまいそうですが、「右に倣え」ということで小鼓は大鼓に合わせるということになっています。ですから一つの舞台が最初で最後というか、一期一会なんです。
しゃけ:
生ものですね。生きていますね。小鼓の音は何種類あるのですか?
森澤さん:
簡単に説明すると、音は5種類あると思っていただいて大丈夫です。右手の肘から先を上げたり下げたりすることで音が出るのですが、見えない左手は常に微妙に動いています。打つ場所も微妙に違いがあり、左右の手の操作と掛け声の組み合わせで手組を作っていきます。
しゃけ:
華やかで楽しそうですね。
森澤さん:
楽屋でよく言われることですが、「慣れて馴れるな」という言葉があります。何度も同じ曲を何年もやることで「慣れる」ことはいいのですが、やり慣れた曲の中には必ず落とし穴があるんです。いくら慣れても「馴れたら」いけないので、「よし、これで大丈夫だ!」と思ったらもう一回やってみる、という繰り返しをしています。
森澤勇司さん×しゃけ 音声インタビューはこちらから聞くことができます。
NY1page.comのインタビューはこちらから
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